『MEISTER KOLLEKTION BY TANGE』 結。

ようやくテンプルが組み合わさったメガネが姿が見え始めた。

このおおよその完成形を久利さんに送り確認してもらい、最後の微調整をし

完成へ走り始めた。

 

 

ただこの時のやり取りで

「納期は答えれません。気長に待ってください。」と返答をしてしまった。

 

メーカーとして失格な返答かもしれないが、

そうとしか答えられなかった。納期を設定して追われる作りをしたくなかった。

 

「いいよ。いいよ。 ゆっくり作ってください。」と久利さんは理解してくれた事は助かった。

それでも作り続け、3月10日に完成した。

 

 

雪は解けてクリスマスローズが咲き始め、春を時々感じるようになっていた。

 

次の日再び検品をして、店舗へ発送した。

連絡を待つ間、朝からため息をつく事が多かった。

 

マイスター大学堂という老舗にとってふさわしい『MOD.1932』になっているのか、

それと久利さんの迸った情熱や期待に応えられた『MOD.1932』になっているのか。

 

それが頭の中を逡巡していた。けれども

「これ以上の物は作れない『MOD.1932』を出したのだから大丈夫。」と言い聞かせていた。

 

久利さんから昼前に

「見ました。素敵です。 どの色もいいです。」と書かれたメッセージが届いた。

 

その後、直接電話でやり取りをして口調からも気に入ってくれてる事が分かった。

「本当に良かったです。 涙が出そう。」と声がもれた。

 

 

ものを作り産み出す事は苦しい事だと思う。

だが作れた後、中年のオッサン2人が喜ぶこの瞬間はステキなものだった。

 

そして久利さんから「この本は丹下さんに相通ずる物があるから。」と紹介された。

 

もう少しで読み終えるが、内容は独りで出版社を立ち上げ、昔の本を復刊させ、装丁、挿絵などに拘って筆者の『美しい本に仕上げたい』という想いが淡々と綴られている。

 

素敵な『本』だと思う。

 

 

そして倒れられた大越さんは元気を取り戻して、廃業の後もたまに工房に寄ってくれる。

 

その都度、倒れた時の『幽体離脱』の体験談を話していく。

僕はもうこの話を7回は聞いた。

 

少しづつ話が脚色され本格化しているので

みのもんたの『午後はOOおもいっきりテレビ』の夏の恒例企画『あなたの知らない世界』

を観ているようで「おぉ~。」とチビリそうになっている。

 

ここら辺で『MEISTER KOLLECTION BY TANGE』のお話しを終えようと思います。

休憩したら、メガネをまた作ろう。

 

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