奔馬。

三島由紀夫が著した『奔馬 (豊穣の海・第二巻)』を読み終えました。

第一巻の『春の雪』を読んだ話はこちら。

 

 

物語としては

『第一巻 春の雪』で悲恋の末に夭折した主人公『松枝清顕』が輪廻をして、

松枝家の書生でいた『飯沼』の子『勲』として昭和の初期の時代に生まれ変わっている。

 

清顕の親友であった『本多繁邦』は司法に携わる職に就き40を迎える歳となり

高校生になった勲と出会い、『勲』と『本多』の二人の視点を中心に物語が進んでいきます。

 

内容としては

父の教育から右傾化した勲が、財界人や政界人の腐敗を嘆き

『理想』と『純粋』を守る為に暴走し始めて、テロを決意するも未遂に終わり逮捕される。

勲を救う為に、本多は弁護士として奔走し

裁判で刑を免除されるも再び主人公は暴走し、本懐を遂げようとする物語です。

 

 

物語の首尾の間、あまりに純粋な主人公への感情移入する事はなく、

歳を重ねた『本多』の視点で物語を見ていた気がします。

 

最初は汗臭いセピア色の世界観でしたが、主人公の内面から『白』の世界が出始め、

それが次第に汚れた『血』の色に周りから浸食されていく印象でした。

 

それだけであれば特別に美しいとは思わなかったと思います。

 

ただ逮捕された後の法廷で

第一巻で逢瀬を重ねた宿、第二巻で忠義を誓った宿の店主が証言台に立つ場面があり、

記憶の中の『清顕』と、目の前にいる『勲』を混同しながら話をしてしまうのですが、

そこに4部作に通底している『輪廻転生』が美しく描かれていたと思います。

 

三島由紀夫は本多が法廷で見た、その景色を『蓮の花』や『光』で表現していましたが

僕は『金色』と『極彩色』の色が見えました。

 

もし輪廻転生があるとするならば、それは極めて鮮やかな色なのかもしれません。

 

 

そしてもう一つ感想を書こうと思います。

 

『純粋性』、『暴走』という行動は、

実際に1936年に起きた『二・二六事件』を想起させました。

度重なる恐慌で、貧窮した地方の農民を目にした陸軍の青年将校が憤り、

腐敗していると考えた政界人を標的にしたクーデタです。

 

物語の主人公も、実在した青年将校も

財界人、政界人を殺害しましたが

主人公は自決し、青年将校は鎮圧され処刑されました。

 

純粋すぎるが故に暴走をするくらいなら

少しくらい濁っていたほうがいいと思いました。

 

 

僕はおっさんになったのかもしれません。

 

 

 

2019年7月11日 8:06 PM  |  カテゴリー:私事

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