三島由紀夫の最後の小説『豊饒の海 (第四巻・天人五衰)』を読み終えました。
第参巻の『暁の寺』を読んだ感想はこちら。
4度目の転生を迎えたと思われる青年『安永透』とが出逢い、養子として迎え入れ
2人は一緒に暮らし始めるも、次第に透の悪辣な性格からこれまで輪廻転生を繰り返してきた『魂(アートマン)』とは
全く違う魂だと本多は気付き、贋者とされた透は破滅へ向かっていきます。
首尾の間、互いの内面を口語体で描かれており、読み易かったと思います。
物語の終盤に本多が出会うはずだった清顕の転生の『魂(アートマン)』に想いを馳せる文章があり、
【転生の出会いは星辰の運行の中で僅かな誤差を生じ、
広大な宇宙の中で別々の方角へ導かせ、
本多が生涯を費やした3つの世代の転身が、本多の生の運行に添うて煌めいた後、
忽ち光芒をひいて、本多の知らぬ天空の1角へ飛び去った。
その何百番目、何万回目、何億回目かの転身に本多はどこかで再会するかもしれない。】
という文は印象的で何度か読み返しました。
第一巻で出家した綾倉聡子へ会いに行き。
これまでの清顕の輪廻の経緯を伝えますが、
無常で以外な言葉が返ってきます。
その返答から
1巻の情熱的な清顕と聡子の悲恋は何だったのか?
2巻の青年の絶対的な忠義は?
3巻の若さへの渇望は?
そして僕が第1巻を読み始めた認識は真実だったのか?と思わされてしまいました。
世界は『物質』によって組成されている『唯物論』ではなく
『認識』によって組成されている『唯識論』に最後は収束された小説でした。
父上は「この小説が最も美しい文学だ。」と言って渡してくれました。
僕も美しい文学だと思います。
そしてこの物語には『色』が走っている様に感じます。
『坂本龍一』の『forbidden colors』が合うと思いますので
最後の曲として添えておきます。